Interview

未来の教育を 創り出すことで 成長を目指す

代表取締役社長
粂川 秀樹
自己PRならぬ会社PRをお願いいたします。
旺文社は「お世話になりました。」と言われる会社です。

私自身、仕事やプライベートでお会いした人から「旺文社さんには高校時代お世話になりましたよ。」と言っていただける機会がよくあります。仕事をする上で非常に励みになりますし、これからも教育を通して世の中の役に立ちたいと、やる気になります。

旺文社の仕事は「学ぶ人」(生徒、学生など)や「学ぶ人をお世話する人」(先生、教育機関、企業)をお世話することです。業務そのものが感謝され、社会貢献につながっている会社だと言えます。
出版不況と聞きますがどうなんですか?
その通りです。旺文社は、出版事業だけでなく教育事業との両方に軸足を置いています。そして、その両事業ともに市場が縮小しているという課題を抱えています。

出版事業では、国内の市場規模は1996年の約2.7兆円をピークに右肩下がり、今ではその半分以下になっています。2021年は紙の書籍と雑誌と電子書籍の出版物を合計して対前年で成長を確保したものの、2022年には再び減少に転じています。(※出版科学研究所調べ)

教育事業についても、少子化の影響を大きく受けています。1996年には約173万人だった18歳人口が2022年には約112万人までに減少しました。(※旺文社調べ)

つまり、旺文社の事業領域がどんどん縮小しているという状態なのです。

しかし、旺文社は長らくの出版不況、少子化による産業縮小の危機にさらされながらも、突破口となる新規事業を興して、常にユーザーの皆様に新しい学習体験を提供し、成長してきました。

出版や教育関連業界への就職を希望する方は、縮小する市場の中でその企業がどのような戦略に基づいて成長を描いているのかをぜひ確認してほしいと思います。
そのような厳しい中、旺文社の展望を教えてください。
基本的に、やることは今までと変わりません。「学ぶ人が、住んでいる場所や経済状況にかかわらず、すばらしい学習サービスや受験情報を受け取ることができる社会」を目指しています。

物理面からも心理面からも学びをサポートし、さまざまな学習の妨げを取り除いて「学びの質」を上げていくことが、我々の使命だと考えています。

幸いなことに、先ほどお伝えしたような厳しい環境の中、旺文社の業績は順調です。ただし、何もしなければ成長が止まることは目に見えています。私たちは以下の2つの方針で2031年の100周年に向け成長を目指し進んでいきます。
方針1既存事業・新規事業の組み合わせで「未来の教育」を創る
私たちは以下のフレームワークを通して事業を見ています。
  1. Before Book:本を買う前のユーザーへのサービス(新規事業)
    パスナビ、英語の友(メディア)、StudiCo等
  2. Book:本を作って販売するサービス(既存事業)
    既存の書籍・雑誌の製作・販売・広告/仕入最適化システム(販売方法の進化)
  3. After Book:本を買った後に行うユーザーへのサービス(新規事業)
    英語の友(アプリ)、ターゲットの友、学びの友、タンゴスタ、入試正解デジタル等
つまり、本を購入してもらうだけではなく、購入する「前」と「後」でもお世話するということです。

これまで「学ぶ人」とのつながりは本を買っていただく所だけでした。しかし、上記の3つがうまくつながることでユーザー体験が向上していき、我々の使命である「学びの質を上げていくこと」ができます。

これは、既存事業と新規事業をうまく組み合わせることでそれぞれに相乗効果を生み出すことでもあります。またこれは、紙“か”デジタルかという選択ではなく、紙“と”デジタルでユーザーへの価値を向上させるということでもあります。“or”ではなく“&”だということです。

今後も、既存事業と新規事業をうまく組み合わせながら、「学ぶ人」とつながるのはもちろんのこと、「学ぶ人」と「学ぶ人をお世話する人」とをつなげることでも、よりよいサービスを提供していきたいと考えています。
方針2社内外の仲間とともに「未来の教育」を創る
旺文社は、「旺文社ベンチャーズ」というCVC(※)を立上げ、有望な教育系スタートアップへの投資も行っています。社内で新規事業を立ち上げていくにあたってさまざまなスタートアップと接し、その先進性やスピード感、優秀な人材が集まるさまを肌で感じました。こうした企業とは「競争」ではなく、協力して未来の教育を創る「協創」をしたいと考えるようになり、CVCという結論に至りました。

実際に投資する際には、投資によるリターンと、優秀なスタートアップとのシナジーという両面を考えて行っています。投資先のスタートアップには資金面での支援だけではなく、旺文社ならではの支援も提供します。例えば、学習コンテンツの提供や学校などの教育現場へのアクセスの支援なども行います。

つまりこれは、旺文社ベンチャーズという新規事業を通して、「学ぶ人をお世話する人」をお世話することです。
※ CVC(コーポレートベンチャーキャピタル):CVCは投資を本業としない事業会社が自己資金で直接投資したり、ファンドを組成し、自社の事業内容と関連するスタートアップに出資や支援をする組織。
100周年まであと8年。手応えは感じていますか?
いくつか成功事例が出てきており、手応えを感じています。例えば、英単語ターゲットシリーズです。紙の本とアプリ「ターゲットの友」や学校向けWebサービス「タンゴスタ!」の組み合わせによって学習体験が向上し、紙もデジタルも共に過去最高の売上を上げています。

書店では、アプリと一緒に学べることで紙の書籍の売上部数も伸びています。学校では、単語テストをデジタルで実施することで学習体験が向上し、採用の継続率も大幅に上がっています。

一方で、課題も認識しています。私たちは、学習参考書などの『学習サービス』と螢雪時代やパスナビなどいわゆる『教育情報サービス』の両方を提供しています。それらがばらばらにユーザーに提供されているという課題です。また、新規事業ではさまざまなデータが大量に蓄積されてきています。しかしまだ、ユーザーの学習体験の劇的な向上に寄与できていないことも課題です。

しかし、課題が見えていることが重要です。これらを解決することでよりよいサービスを提供することができるようになります。「未来の教育」を創る鍵がここにあると考えています。

そしてこれからも、既存事業と新規事業をうまく組み合わせることで、私たちがお世話をすることのできる人たちを増やし、同時にお世話できる接点も増やします。それによって、縮小する市場であっても成長できると考えています。
どんな人と一緒に働きたいですか?応募される皆さんへのメッセージは?
私たちが重視するのは、以下の3つです。
  1. 「未来の教育」を創りたいと思っている人
  2. 「学ぶ人は、変えてゆく人だ。」を実践できる人
  3. 「旺文社にカルチャーフィット」する人
これまでお話した通り、私たちは「未来の教育」を創っていこうと考えています。その志に共感してくれる人と一緒に働きたいと考えています。既存事業や新規事業にかかわらず、少しでも「未来の教育」をよくしていこうとしている人です。

また、社是に加えて掲げているコーポレートスローガン「学ぶ人は、変えてゆく人だ。」を実践できる人を求めています。具体的には、学びに前向きで、さまざまなことを自分ごととして捉え、課題を見つけ、それに対応する方法を学んで解決していける人。物事を自分ごととして捉えられる人は、ユーザーの課題を深く見つめることができ、よいサービスを提供できるはずです。

さらに、「何をやるか」も大切ですが、「誰とやるか」も非常に大切です。一緒に働く仲間として、「互いに合うか」を重視しています。就職活動では、会社が皆さんを選ぶだけではなく、皆さんも会社をしっかり選んでほしいと考えています。

まずは皆さんに、旺文社で「未来の教育」を一緒に創っていこうと思っていただけたら嬉しいです。もしそう思っていただけたら、しっかりと準備をし、その思いをぶつけていただけたらさらに嬉しいです。